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(22)病院・222号室(夜)
   ずぶぬれのまま戻ってくるパジャマ姿
   のなお。
   雨のせいか頭の包帯はほとんどほどけ
   ている。
   見ると、ベットの上に、制服に着替え
   てちょこんと座っているさき。
   あいかわらずのニコニコとした笑顔。
   驚くなお。
なお「なにやってるの・・・」
さき「なおちゃん、着替えて」
なお「さき体は・・・」
さき「今は平気。出かけよ」
なお「どこへ?」
さき「いいから」
なお「また倒れたらどうするの」
さき「遠くには行かないよ、すぐそこだから」
   考えを変える気はなさそうなさき。
なお「…(さきを見つめる)」

(23)廃校・教室(深夜)
   静まりかえった校舎。
   ひと気もなく、しんとしている。
   廊下から、適当な教室に入る制服姿の
   なおとさき。
さき「去年、廃校になったんだぁ」
   黒板をさわってみたり。
   机をなでてみたり。
   椅子にすわってみたり。
   楽しそうなさき。
   反対に曇った表情のなお。
   二人ならんで席についてみる。
   お互いをみつめる二人。
さき「なおちゃんと学校行きたかったなあ」
なお「(無理とはわかってるが)治して出て
 きなよ」
さき「なおちゃんの学校なんて絶対ムリだよ
 ぅ」
なお「転校するよ。さきの学校に」
さき「ダメ。今のままちゃんと卒業して。よ
 そみしちゃダメ」
なお「行く気があればどこだっておなじだと
 思うけど」
さき「いまのなおちゃん、なりたいものとか
 ある?まだ見つけてないでしょ?だから、
 ね。いいとこ行ってるんだから、ちゃんと
 通って」
なお「なりたいもの・・・」
さき「わたしに言わせればぜいたくだよぉ、
 なおちゃん。普通に学校に行けるんだから。
 行かなきゃダメ。うらやましい」
なお「高校にはどのくらい行ってないの?」
さき「一度も行ってない」
なお「え?」
さき「一度も行ってないよ。がんばって受験
 したのに・・・せっかく受かったのに。
 体壊しすぎて行けなくなっちゃった」
なお「さき・・・」
さき「バカみたいでしょ、わたし、バカだか
 ら。制服着て学校行ってみんなとわいわい
 やって・・・だからね、いっつもハンガー
 にかけて見えるとこに置いてたの。はやく
 よくなって学校行こうって」
なお「・・・」
さき「やりたいことっていうか・・・それが
 今の私の夢のひとつ」
なお「夢・・・もうひとつの夢は?」
さき「体を治すこと、パパとママを安心させ
 てあげること。それから」
なお「それから?」
なお「友達をつくること」
   微笑みながらじっとなおを見つめるさ
   き。
   なお、視線をそらせない。
さき「でも、それは叶ったんだよね。ひとつ
 でも叶ってうれしい」
なお「・・・」
さき「ありがとう、なおちゃん」
   さき、笑顔。
   だが。
   作り笑顔のようにも見える。
さき「なおちゃんにもなにか素敵な夢ができ
 るといいね」
なお「夢・・・」

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