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(19)病院・222号室(昼・曇天)
   ベッドに寝ているさき。
   けほっ、けほっと咳をしている。
   かなり悪くなっている病状。
   どこかから帰ってくるパジャマ姿のな
   お。
   頭には、また新たに包帯をまかれてい
   る。
   ベットの横に簡易椅子を置き、さきの
   方を向き座るなお。
   重い表情。
   なおに気づくさき。
   弱弱しく笑顔を向ける。
さき「なおちゃん・・・」
なお「しゃべんなくていいよ」
さき「ごめんね、なおちゃんばっかり怒ら
 れて・・・」
なお「謝んなくていいよ、連れ回したの、わ
 たしだし」
さき「忘れたの?私たち、同罪だって言った
 でしょ」
なお「そんなに悪いとは思わなかった」
さき「ちゃんと言っておけばよかったね。な
 おちゃんこそ、頭は?」
なお「いちおう、異常なし」
さき「よかった」
なお「さきのお父さんとお母さん、近いうち
 に来るって看護師さんが言ってたよ」
さき「そう」
   じっと天井を見つめるさき。
   けほっ、けほっとさき。
   思わず駆け寄るなお。
なお「大丈夫?」
さき「・・・いつものことだよ」
なお「聞いていい?」
さき「なに?」
なお「どれだけ悪いの、カラダ」
さき「治らない」
   その言葉に、ドキッとなるなお。
   硬直している。
   さき、じっとなおの方を見ている。
なお「(意を決して)・・・死んじゃうって
 こと?」
さき「(微笑んで)ちがうよ、勝手に殺さな
 いで」
なお「治らないって」
さき「今日すぐ死ぬかもしれないし、おばあ
 ちゃんになるまで生きられるかもしれない。
 良くなったり、悪くなったりの繰り返し。
 ちょっと気を抜いたらすぐ悪くなる」
なお「・・・それ・・・」
さき「前に、ね、なおちゃん、わたしたちが
 病院にたくさんお金落としてるって言った
 よね。パパとママ…私のために無茶ばっか
 りしてる。治療費をずっと払い続けなきゃ
 いけないから。なのに私は完全に治らない」
なお「だからさきのパパとママはぜんぜん
 来れないんだ・・・完全に治す方法ない
 の?」
さき「今の医学じゃ無理なんだって。ときど
 き死にたくなるの。お荷物になってるのわ
 かるから。でも、死にたくない。もっとい
 ろんなことたくさんしたい」
なお「……」
さき「それになおちゃんに会えた。なおちゃ
 んともっともっといろんなことしたい。健
 康になりたい」
なお「・・・なんで、ちゃんと言ってくれな
 かったの」
さき「言ってもどうにもならないから。話し
 たら避ける人ばっかりだった。なおちゃん
 には避けられたくなかったから」
なお「(怒って)わたしが避けると思う!?」
さき「わかんない…」
なお「バカ!」
   怒って部屋を出て行くなお。
   黙って見送るしかないさき。
   天井を見つめ、そっと目をとじる。


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