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(14)病院・222号室(深夜)
   しんと静まりかえった深夜の病室。
   薄明かりだけの静かな空間。
   なおもさきも静かに眠っている。
   が、
さき「けほっ、けほ・・・・」
   少し咳き込むさき。
   それに気がつき、うっすらと目を開け
   るなお。
   さき、上体を起こしている。
   息苦しそうなさき。
   ベットから降り、タオルを取ると、
   再びベットに腰掛ける。
   先日と同じように、ゆっくりと丁寧に
   パジャマを脱いで上半身裸になる。
   同じく汗びっしょりの身体。
   背中を拭こうと手をまわすさき。
   やはりうまく背中は拭けない。
なお「貸して」
さき「え?」
   気がつくと、なおが上体を起こして
   さきの方を見ている。
   ゆっくりとベットから降りさきのそば
   に近寄る。
なお「貸してよ。拭けないんでしょ?背中」
   驚いた顔のさき。
   真面目な表情でじっとさきを見るなお。
さき「いいよ、一人ででき・・・」
なお「(きっぱり)いいから」
   手のひらをさし出すなお。
さき「…(躊躇している)」
   じっとなおの手と顔を交互に見る。
   生真面目ななおの表情。
さき「…ありがと、お願い」
   さき、少し微笑んで、タオルを渡す。
   なお、ベットの端に座り、さきの背を
   拭き始める。
   丁寧に、ゆっくりと。
   なおからは見えないが、嬉しい気持ち
   と哀しい気持ちが混じったような複雑
   な微笑を浮かべるさき。
   薄暗闇の中、ゆっくりと流れる時間。
なお「(拭きながら)・・・聞いてもいいか
 な?」
さき「え?」
なお「…(躊躇している)」
さき「なに?」
なお「体…なにかあるの?」
さき「なに、とつぜん?」
なお「いや・・あちこちさすってたから…
 何か、あるのかな、って・・・。」
さき「ああ。見られてたんだ…」
なお「ご、ごめん」
さき「いいよ。傷がないか確かめてただけ」
なお「傷?」
さき「薬の副作用。体が乾燥してかゆくなっ
 て寝てる間に爪でひっかいてて・・・朝、
 知らない間に、血だらけになってた」
なお「それって・・・」
さき「最近はだいぶマシなの。でもね、やっ
 ぱり疼くの。だから夜中、目が覚めたとき
 とか、どこか傷つけてないかな…ってつい
 クセで見ちゃうんだ…」
なお「傷なんて・・・」
さき「見て」
   なお、薄暗闇のなか、じっとさきの裸
   体に目をこらす。
   よくみるとわずかに赤く引っかいたよ
   うな痕が何箇所か、ある。
なお「・・・」
さき「あるでしょ?」
なお「でも・・・」
さき「汚いでしょ?」
なお「え?」
さき「傷だらけ。汚いでしょ」
   答えにつまるなお。背中をじっと見つ
   める。
   じっと空中を見て、寂しい気な笑みを
   浮かべるさき。
   さきの背中は震えている。
なお「…(さきの背中を見ている)」
   なお、真面目な顔になり、
なお「綺麗だよ」
さき「嘘」
なお「何でそんなこと言うの?」
   ゆっくりとなおの方を向くさき。
   凛、とした顔のなお。
なお「さきは綺麗だよ…汚くなんかない」
さき「嘘…汚いよ…」
なお「汚くなんかない!」
   じっと視線をそらさずさきを見るなお。
   複雑な表情のさき。
なお「…(さきを見つめている)」
さき「…(なおの視線を受けとめる)」   
   二人の間に流れる沈黙。
   やがて顔をくしゃくしゃにしながら
   笑みを浮かべ、
さき「なおちゃん…」
   裸のままゆっくりとなおの体を抱き締
   める。  
   なおの肩に顔をうずめるさき。
   泣いてはいないが。
   なおの腕の中で小刻みに震えているさき。
さき「ありがとう…」   
なお「……」
   気持ちが昂ぶり、なおの身体も震える。
   さきの身体にそっと腕を回し、きつく
   抱きしめる。
さき「……」
   お互いの欠けた何かを埋める様に、
   ゆっくりと、やがて強く求めあう…。
    
   薄暗闇の中、流れていく二人の時間。(絡み)
   遠くで救急車のサイレンが聞こえる。
   窓からは月明かりが差し込んでいる。


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