2ntブログ
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またある日の体育の時間。
その日は体操の授業でした。
生徒たちは皆、柔軟体操に悪戦苦闘しています。
体操部以外の生徒は、どちらかと言えば体の堅い人がほとんどでした。
私は中でも超・体が堅くて~…次の日絶対筋肉痛やし~。
めっちゃ死ぬ思いをしておりました…。
フッと彼女…ナカタニ・ミキの方へ目をやると…
両足を裂けそうなくらい前後左右にひろげたり~
ヨガのポーズを取るように片足を頭の後ろに乗せています…!!
ヒイィィィ!!!!(゚ロ゚ノ)ノ
何でもない顔をして柔軟をするその姿に、クラスメートは驚きの声をあげました。
なんちゅう軟体動物なんや~…!!…これからはタコ女と呼ばせてもらおう・・・
心密かにそう思っちゃった私です。
あとで本人に聞いてみたトコロ、中学の時には器械体操を、転校する直前までは
バレエ(←踊る方です)をやっていたそうです。
にゃるほど。
どおりでタコ女のハズやわ…。

彼女はスポーツ万能(なぜか球技以外)で、とても頭が良く、
ほどほどの器量良しで、バレエ、茶道、その他何でもござれの、
三拍子も四拍子も揃っていた女子だったのです。
そんな魅力的な女子が身近にいたら、男子が放っておくはずがありません。
転校生…という肩書きも手伝って、彼女を一目見ようと、休み時間になると、
他の教室から学年問わず、よく男子が見学に来ていました。

人通りの少ない踊り場で、イケメン君に呼び出された彼女を見かけた事がありました。
あ…××君と話してる…。
たまたま前を通りがかってしまい、スルーしようかと思っていたら、
二人と目が合ってしまい~。
「…!」
私に気づいたナカタニちゃんがこちらへやって来ます。
「…あ」
取り残されたイケメン君。
彼女と歩きながら~
「えっと…いいんかな」
「うん。いいの」
「大事な話してたんじゃ…」
「うん、なんかつきあってって」
「え…ど、どうするん!?」
「どうしよう」
「どうしよって…」
「……」
思わず、口から出てしまった一言。

「嫌やったらやめとけば?」

「…!」
ハッと立ち止まり、少し考え込む彼女。
「……うん…そうする…断る」
「……ほな次の教室行こっか」
「うん♪」
お互い顔を見合わせて、ニッコリ。
何事も無かったかのように移動教室へ向かいます。
(↑ちょっとサイテー。)

…あれ?
今、何で私…ホッとしてるんでしょう!?

(5)へとつづく。

ある時は、卒業間近の3年生をのぞいた1・2年生だけでの
全校マラソン大会がありました。
女子は男子よりも走る距離が短いのですが、12kmもあります。
その距離を500人近くの女子が一斉に走り出しました。
私と彼女~ナカタニちゃんは一緒にスタートしました。
~けれど、恐ろしく速い彼女のペースにとてもじゃないけどついてゆけず、
「ごめん、先行って~…!!」
途中からは別々に走ることになりました。

も~あの娘の姿も見えなくなったなぁ~…。
そんな事を考えつつ、私は一人お気楽に、のんびりと走っていました。
しばらくして…30分くらい経ったでしょうか?
折り返し地点から戻ってくる先頭組が、豆粒のように見えてきました。
段々、ダンダン、だんだん…とこちらへ近づいてゆきます。
オォ、先頭組は女子二人でトップを競り合ってるなァ~…
などと、ぼんやり眺めておりました。

(。´д`) ン?
ちょっと待ったァ~~Σ(゚ロ゚」)」!!
良く見れば、そのうちの一人は彼女じゃ~ないですかァ!!?
そしてトップを競い合っているお相手は…俊足で有名なテニス部のエース!!
(優勝候補の方です。毎年運動部はプライドを賭けて勝運を競っていた…)
ちょ~めっちゃ競り合ってるし~!!
うゎっあの娘、抜かしても~たで…!!
私のすぐ横を真っっ剣な表情で瞬く間に駆け抜ける女子二人。
思わず立ち止まり、ぼーぜんと見送ってしまいました…。
…なんてヤッチャ…(゜ロ゜)アングリ・・

「どうやった?」
ゴールで休憩する彼女に、結果を聞いてみました。
「7位。」
「えっ何で?1位やったのに?」
「途中で一人になっちゃって、道が判らなくなったの」
「??」
…よくよく聞いてみると、どうも最終コースである、校舎の周りを、
他の人より一周多く回ってしまったみたいで。
テニス部のエースを途中で大きく引き離したまでは良かったけど、
何しろ転校したてで、いきなりのマラソン大会。
この辺りの地理に詳しいはずもありません。
まさかこの日のためにわざわざ下見なんてしないでしょうし…。
もし道を知っていたら、ひょっとして1位だった可能性も…。
やっぱすごいヤツやわ!!

マラソン大会の結果は校内新聞に載ります。
1位:テニス部××さん、2位:バスケット部○○さん、3位:陸上部△△さん…
名前と共に順々とランナーの所属クラブが紹介されました。
そして~6位までは運動部なのに、堂々と運動部を差し置き、
7位:茶道部 ナカタニ・ミキさん~の名前を目にした時には、
なんだか場違いで思わず笑ってしまいました…。

(4)へとつづく。

そして気がつくと、いつも一緒に行動する友達になっていました。

クラスメイトは、あの娘の事を「ミキ」と呼びました。
そして私は「ナカタニちゃん」と呼んでいました。
(恥ずかしくて、どうしても友達を下の名前で呼び捨てにできなかった…)

「な~ミキって地球人やと思う?」
「ううん、絶対宇宙人やわ~!」
友達の間で、こんな会話が交わされるほど、彼女の言動は変わっていて、
つかみどころが無く、私には驚かされることばかりでした。
数え上げるとキリがありませんが、ほんの一部例にあげてみます。

ある日、化学の実験がありました。
ビーカーの中には、ドライアイスの様な固形物がモクモクと煙をたてています。
「火傷しないから、誰か触ってみたい人!」
そう言われても…~誰が好き好んでやりたがるんでしょう!?
シーン…と静まり返った教室。
その静寂を破ったのは…姿勢もよろしく~
天井につくほどにまっすぐと手を伸ばしていた彼女…ナカタニ・ミキでした。
「…!!」
クラスメイトは驚きました。
「スゴイ勇気あるわぁ~…」
思わず私も感心してしまいました。
「じゃあナカタニさん、前へ出て」
「…はい」
彼女はトコトコ教壇の前へ出て行くと、黙って右手を差し出します。
その手のひらに…ビーカーから取り出されたカタマリがそっとのせられました。
「…!」
わかってはいても、彼女の手が火ぶくれになりそうな気がして、
クラスメイトは皆、眉をひそめたり、悲愴な顔をしています。
彼女は~…特に変化も無く、わりと平気な表情で。
しだいにニコニコと~笑顔さえみせています…。
…信じられない、この娘フツーの人間とちゃうわ!!
この時、誰もがそう思いました。

ある日の英語の授業。
先生はイギリス人です。
その日は、先生の簡単な質問に英語で受け答えする…という形式の授業でした。
無作為に生徒が当てられていきます。
英語が苦手な私は~(今でも超苦手なんですが…)
どうか当たりませんように…(-人-)
必死で祈りながら、小さくなっていました。
けれど、そんな時に限って当てられてしまうのでした。
結果は…言わぬが花でしょう。
彼女も指名されていました。
先生が英語で質問します。
「(あなたの所属しているクラブは何ですか?)」

「I belong to the tea ceremoney club.」
(わたしは茶道部に所属しています)

ティーセレモニーって『茶道』と言う意味だったんですね。
その単語を苦もなく思いつき、発音も明瞭に答えたものだから、
クラスメイトは感心して、一斉に、
「オォォーッ!!(゚ロ゚)!!」
私も思わず、
「Σ(゚Д゚ノ)ノオォッー!!」

大人になった現在(いま)でこそ簡単な日常会話であれば、
大抵の人が話す事ができると思いますが、
(私は今でも絶対無理です…)
その時、高校生だった私たちにとっては、それがとても新鮮な驚きでした。

(3)へとつづく。