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それからは、何とか仕事の調整をつけ、新幹線のチケットを手配して…と、
慌ただしく準備を進めました。
彼女のお姉さんは、まだ大学を卒業していなかったので、
一人で大阪に残っていました。
私は、新幹線の時刻表を見せてもらう為に、お姉さんの家を訪ねました。
「あの娘ね、今すごく太ったんよ」
「何で!?」
「何か無茶してるみたい」
「う~ん…」
「ケイさんが来るの、楽しみにしてるみたい」
「ホンマに?それなら嬉しいけど…」

一人で、東京なんて、遠い土地へ行った事が無いけれど、何とかなるか…。

東京駅まで彼女が迎えに来てくれることになっていました。
私は新幹線の中、退屈しのぎに音楽を聴いたり、本を読んだりしていました。
名古屋を過ぎ、だんだん東京へと近づくにつれ、
手にした本の内容も頭に入らなくなってしまい、
自分の心臓がドックン、ドックン…と早鐘を打つ音が聴こえてくる気がしました。
もし、あの娘が駅に来てなかったらどうしよう!?
もし、来ていても、大阪へ帰れって言われたら…!?
~何だか悪いことばかり考えてしまいます。

「まもなく東京です。お客様の手荷物~…」
ああ、とうとう着いてしまった…。
新幹線が東京駅のホームへと入ります。
あっあの娘や!
車窓から、すぐ目につきました。
通りすがりのほんの一瞬だったけど、間違いありません。
新幹線から降りると、息急き切らし、彼女の元へと走って行きました。

「…元気?」
「…うん」
一目見た時、確かに太った!…と思いましたが、
以前は病的に痩せていたので、この位でちょうどいいのかも。
ただ、表情は、以前より暗くなっていました。
けれど気にせず、いつも通りに話しかけました。
「時間があるけど、家に行く前に、どこかへ行く?」
「うん」
彼女の提案で、上野公園へ向かうことになりました。


その途中、アメ横…という通りを抜けようとした時、一本道を間違えてしまい、
私と彼女は裏道に迷い込んでしまいました。
小雨が降りはじめ、霞がかかる閑散とした裏通りに、
水商売や風俗のお店、ホテルなどがポツポツと軒を並べています。
昼間から開けているお店もありました。
呼び込みの男が、彼女の顔を凝視しています。
思わず、二人で差していた傘で、彼女の顔を隠して、
急ぎ足でその男の前を通り過ぎました。
「隠すことないじゃん!」
後ろから男が叫んでいます。
「失礼なヤツやな~、人の顔をじーっと見て!」
「…あ、そうか、失礼なのか…」
何だか、他人事みたいにつぶやく彼女。
ちょっとしっかりして~、見られていたのは、キミ、ナカタニちゃんやねんで!

(18)へとつづく。
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